12月1日(土)行ってまいりました。藤枝市の丘陵地にある静岡産業大学にて、
茶業界各権威者の皆様のお話を伺いました。
講師の皆様とタイトルは・・・・
(1)『やぶきた』はどこから来たのか。 山口聡氏 愛媛大学
DNA分析を通してやぶきたのルーツを探る話で、どうやら中国種からの来歴が
推定されるということらしいが・・・アッサム系も否定できないということです。
秋山園が所有する『ふうしゅん』(富春)というのはかつて栄西禅師が勉強した中国の地
富春江から名をとったということで何か名前の由来を知ると後光のさす気がしますね。
(2)『やぶきた』が認知されるまで。 武田善行氏 元国立茶試
品種普及の難しさを茶育種研究第一線の研究者の視点から解説していただき
また今後の世界の緑茶としての、日本茶『やぶきた』を含めた中での
発展可能性を力説しておられました。
(3)『やぶきた』栄光への道のり。 時田鉦平氏 東栄製茶
茶商から見た『やぶきた』品種の歴史と変遷、どうやって『やぶきた』が・・・
という非常に多彩な話題の玉手箱の持ち主で敬服に値するお話であり、
80歳を超えても尚矍鑠とし、弁舌すこぶるなめらか、記憶と資料の整理と正確性は
年齢からは想像できないものがあります。
お茶が売れなくなった理由は、
『やぶきた』が『ダメ』になったから茶が売れなくなった。
ちゃぶ台が無くなった。
ペットボトルなどによる飲み方革命。
そして何より日々の暮らしぶりの変化、所謂ライフスタイルの変化を力説しておられました。
(4)『やぶきた』の栽培・製茶法・評価 柴田雄七氏 カワサキ機工
柴田氏の功績は日本の『やぶきた』を語る上で欠かす事ができません。
戦後『やぶきた』の普及は柴田氏の茶業史ともいえるでしょう。
特筆すべきは、品評会において『やぶきた』が90%以上の出品となってしまい全国茶品評会は
『やぶきた煎茶品評会』となってしまったということでしょう。
また製茶機械も『やぶきた』の品種特性に合わせて改良されてきたこと。
『やぶきた』の欠点とされていることについては、対応策も採られてきているが
茶の味や香りについては、『やぶきた』の本質に関わる点であり新たな商品開発のヒントが
隠されているのではないか。という発言でありました。
(5)『やぶきた』の限界 鈴木康孝氏 県茶業研究センター
『やぶきた』偏重の弊害を述べられ、生産・流通・消費・茶業界における
問題点を指摘されました。
(6)『やぶきた』以外のどんなお茶の出現が期待されるか 荒井昌彦氏 ㈱伊藤園農業技術部
荒井氏とは私が本格的に品種に取り組み始めた頃からの旧知の仲であり、年齢や
お互いの家族構成が似ていることからも、様々な場面で茶に関しての忌憚の無い意見を
交わしてきた間柄であります。
茶業界のガリバー的企業である伊藤園様には様々なサジェスションがあり、今後の
茶業界また茶業経営におおいに参考になる意見が含まれており
非常に興味深いものがありました。
また同氏の発表の一部に秋山園の『品種茶アラカルト』の話題も出され、
『なかなかあの品質と茶種は価値があります。』と評価してくださったことは
有難いことで、今後の励みになりました。
(7)ポスト『やぶきた』を考える 白井満氏 財団法人世界緑茶協会
白井氏の話は、世界的視野から緑茶を語る点、切り口に非常に興味をひかれました。
世界市場規模では緑茶は10年間で53%も伸びているが、これは主に中国の緑茶
輸出が増えているからだという事です。
また緑茶は健康志向と効能(アンチエイジング・脳機能に対する効果)日本食ブームなど
まだまだ世界に向けて伸びる可能性はあるというご指摘でした。
また緑茶は、高学歴高収入消費者をターゲットに市場が動く可能性があるとしておりました。
そして緑茶としての日本茶は中国茶と比較すると、色々と市場展開の点で
もうひとつの感があり、中国茶のほうがストーリー性・各茶特性に秀でたものがある。
とのことでした。
最後に私が師として仰ぐ茶業界の先生の一人、中村順行師がまとめ総括として
『やぶきた』という茶が発見されて来年100年になります。これを良い機会として
『やぶきた』日本茶業を再考して、新たな発展、希望のある未来を開こうではありませんか。
ということでまとめておりました。
研究生横谷君と一緒に前列から2列目に席を置き、ペンを執りながら各人の講義に
耳を傾け、新しい切り口・発見をした思いがいたします。
今後の茶業経営に生かすことができる内容が多々ありました。
諸先生皆様に感謝と御礼申し上げます。